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「御誕生日おめでとうございます、陛下」

「陛下」

「陛下」

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 ・

 変わらない言葉を、変わらない抑揚で、繰り返し、同じような笑みを浮かべる。
 「陛下」、というのを「殿下」に変えてみれば、ほら、去年と同じだ。
 何も、変わらない。

「ありがとう」

 俺も、変わらない。
 少し態度を変えるだけで、ほら、掛ける言葉は全く同じ。
 変わらない言葉を、変わらない抑揚で、繰り返し――
 でも、同じようには、笑えない。

 繰り返されてきた誕生日の風景。
 生誕祭に沸く民と、そんな空気などお構いなしに縁談や外交事をちらつかせる客と。
 同じように振る舞い続けようとする、俺と。

 「立派な殿下」を示してきた。
 その同じ場で、今年からは「立派な陛下」で在る、ただ、それだけなのに。

 父上が亡くなって、お前がいなくなって、
 それだけ、なのにな。
 この大勢の人、人、人の中、
 たった二人がいなくなった、それだけなのに。



 ――ただ、つまらないんだ。







≪あとがき≫
 web拍手御礼SS第6弾。Side:Bへ続く。
 「それだけ」から2パターン書いてみたかった結果ですが……原作エドガーらしさはあまりない、かなぁ。