DATE 2009. 1.23 NO .



「……何だか楽しそうね」

「あれは楽しいというか何というか……」

 年齢ひとつで、何をそこまで叫ぶような事があるっていうんだ。
 何歳かなんて関係ない。

 バッツ達の様子を眺めて、それから傍のティナを見やる。
 ――関係ない。

「ねぇ、歳は前に聞いたけれど……誕生日はいつなの?」

「え?」

 唐突にそんな事を聞かれて、僕は一瞬うろたえてしまった。
 けれど、すぐに思考は冷えて。

「わからない。僕はもともと……孤児だったからね」

「そう、なんだ」

 こんな風に言ったらティナは気にしてしまうだろうか。
 そう思ったものの、意外にもティナはふわりと笑って。

「おなじ、だね」

 僕の目を覗き込んでくる。

 相手が目線を合わせようとしてくるのは嫌いだ。
 それが見下ろさないようにするための配慮だとしても、自分の小ささを思い知らされるようで苛々する。

 けれどティナにそうされると、不思議と嫌な気はしない。

「私もお父さんとお母さんの顔を知らないの。誕生日は、お父さんの友達に会った時に教えてもらったんだけどね、あまり実感わかないかな」

「それで、いつの生まれだって?」

 答えを聞く前に、冬かな、と何故か思い浮かんだ。

「10月18日」

 予想が外れた事を表情に出してしまったのか、

「……どうしたの?」

 すぐにティナにそう訊かれてしまった。

「あ……いや、何となくティナは冬生まれなのかなーって思ったから、ちょっとびっくりしてたんだよ」

 冬というか、雪。
 真っ白な雪みたいな印象があったから。

「どうしてそう思ったの?」

「……大した事じゃないよ」

 だから冬生まれなんじゃないか、って。
 そんな根拠のない理由……どうしたっていうんだろうな、僕は。






「――今度の誕生日、一緒にお祝いしない?」

 またティナが唐突にそんな事を言う。

「一緒に、って……僕と?」

「そう。誕生日がわからないなら、一緒にお祝いしてしまえばいいのよ。楽しい時間を皆で分け合うと、もっと素敵なものになるもの」

 季節感なんて欠片もないこの世界に、気持ちいい風が吹いて、月が綺麗で、秋桜なんかが咲く頃。

「しばらく黙ってると思ったら、そんな事考えてたんだ」

「……駄目?」

「じゃあ、早くこの世界を何とかしないとね」



 僕にはそれがいつになるのか全くわからない。
 そもそもあとどのくらいの時間が残されているんだろう。

 それでも、
 それでもまた、ティナに会えるかもしれないしね。
 ――いつか、どこかで。







≪あとがき≫
 web拍手御礼SS第7弾。相変わらず「誕生日」編。
 「僕らの共通点」の仲間な感じで。