DATE 2009. 2.18〜2009. 5.31 FF4TA企画 NO .



「――弟とはどういうものなのだろう」

「……は?」

 唐突な呟きにパロムは焚き火から目を離し、思わず傍らのセシルを見やった。

「私の、あの人の弟として接した時間はとても短いものだし、パロムの方がずっと先輩だと思ってね。一度聞いてみたかったんだ」

「何だそれ……」

 未だに世界一の軍事大国といえるバロンの国王陛下は、尋ねる口調こそ変わったもののはるかに年下のパロムに向ける表情は昔と変わらない、まま。
 聞こえないように小さくため息をついてから、聞こえるように大きく息を吸い込む。

「同じ親から生まれた年下の者特に男子古くは同性の間で言い妹をも言った広辞苑第五版」

「……?」

 今度は、セシルが呆然とパロムを見やる番だった。

「何? ちゃんと説明したろ」

「いや、そういう意味ではなくて……それから最後に何て言ったんだ?」

「セシルの質問と同じくらいどうでもいい事だよ」

「それはひどいな」

 言葉ではそう言いながらも少し、セシルの口元が緩む。

「どうでもいいだろ。……まぁ、俺達は双子だからあまり歳の上下の意識はないけどさ、いちいちあいつの弟である事の何たるかなんて考えてたら、頭がどうにかなっちまう」

「……君らしい考え方だ」

 それは、黒い兜の下に時折垣間見えた、あの微笑みと変わらない。
 この王様が気づく事はないだろう。
 あの時ポロムが言った言葉に嘘はない。自分もそう思ったし、今も思っている。

 例えば少しでも歳の差のあるきょうだいがいたなら、きっと、こんな風に――

「……じゃ、俺もう休むから」

「そうか。引きとめて悪かった」

 立ち上がった背後、ゆらゆら揺れる焚き火の向こう。
 重々しくも静かな足音が、近づいて来ていた。

「あんちゃんなら、うまくやれるさ」

「え?」

 あのあんちゃんは、気づいているだろうか。

「昔ってもんもさ、そんなに悪くはないと思うんだよな」

「ははっ、パロムが『昔』だなんて言うんだから……僕も歳をとるわけだね」

 黒と白、両方を負って初めて拓ける道がある。
 ずっと昔から憧れて求め続けたはずの単純すぎる理は、今――






 振り返ると、セシルの傍には黒く大きな後ろ姿があった。
 セシルは、笑っている。

(……振り返ればいいのに)

 俯いた視界に映るのは、草ひとつ生えない乾ききった大地。

(こんなくだらない景色ばっか見てるようじゃ、頭がどうにかなっちまうぜ?)

 一緒に過ごした時間は通りすがり並みでも。
 ――案外似たもの兄弟だ。



 顔をあげると、ポロムが近づいてくるのが見えた。
 ポロムは、飽きるほど見慣れた表情をしている。

(間違いなく、俺があの二人にちょっかいを出してきたとか思ってるな、あれは……)

 そんな姉とも、ようやくまた向かい合えるようになった。

 いずれにせよ。

 一緒に過ごした時間は誰よりも長くても。
 通って来た道のりはそれぞれ違う、それこそ黒と白くらいに。

「――案外似てない姉弟だと思うんだけどな」

「いきなりどうしたの?」

「いーや、何でもない」

「……変なパロム」


「そうだな、変だ。結局どうでもいい事――ただ、それだけだってのにな」







≪あとがき≫
 ポロムが怒るのを忘れるほどにびっくりなパロムになってしまって、どうもすいません\(^O^)/
 「自分」がはっきり確立されているというか、やばい時に強い、そんなイメージですパロム。
 TAパロムは知らないですけどorzorzorz

 まぁ結局どうでもいい事だよね、っていうのがテーマなんだと思います(丸投げ!)。





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