DATE 2008. 9.19 NO .



「……そう。いいんじゃ、ない?」

「嘘つけ。…お前、今一瞬口元が歪んだぞ」

「そんな事ないって。切ってみればいいじゃないか、その、長…い」

「笑いたきゃ正々堂々と笑っとけっての団長閣下!」

「……っ、そんな事言ったらまた笑ってしまうだろ!」

「安心しろ。人の服装を見ていきなり吹き出した奴に、今更何の期待もしてない」

「それはひどいな」

「どっちがだ。だいたいまだ切ってもいないのに、何がそこまで笑えるんだ」

「…だって、その髪を切ってしまったらユーリがユーリじゃなくなりそうだから。出会った時からずっと長かったのに、さ」

「いやいやいや、生まれた時からこの長さだったかのようなその思い出は何だ!? お前とつるみ始めた頃はまだ短かったぞ!」

「あれ、そうだっけ?」

「間違いなくそうだよ!」

「…でも、もったいないな。せっかく綺麗な髪なのに」

「言う相手を間違ってるぞ、フレン。そういう言葉は城の中の貴婦人にでも言ってやれ」

「お世辞なんかじゃなくて、僕は本当にそう思っているよ? 僕の髪はこんなだけどさ、ユーリのは長くて艶のある、綺麗な髪じゃないか」

「お前、天然誑しなところまで同じなのか?」

「……誰と?」

「――いや、何でもない。…それにしても、実際切ってもっと大笑いされるくらいなら、邪魔でもこのままにしといた方がマシだな」

「邪魔? 騎士団にいた時も長かったのに……願掛けが成就したからもう要らない、とか?」

「誰がそんな女々しい事をするか!!」

「そんなに怒らなくたっていいのに」

「帰る! お前が死んでから切る事にしたから安心しろ!」

「そっか。…それはよかった。やっぱりもったいないよね」

「フレン……最初からそういうつもりだったのか?」

「――ユーリは察しがいいね。団長補佐に欲しいって陛下に願い出ようかな」

「〜〜〜〜っ、またその話かよ!!」







≪あとがき≫
 殿下が陛下になった頃の話な感じで。フレンの「……ぷっ」にはびっくりしたもんです。
 失恋したからばっさりと、とかそういうお題だとは思ったんですけど、ね。細かい事は気にしない。





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