DATE 2009.11. 1 NO .



「あ……」

 ここはミシディア、「あの」ミシディアなんです。

「あい……」

 私の頭から出てくるような些末な疑問くらい、

「…ぼ……」

 すぐにでも解決してくれる、はず――

「――何やってんだ?」
「う…っ!?」



「おーい、大丈夫かー」

(い、いつの間にパロムがこんな近くに…っ!)

 焦った拍子に放り投げてしまった本にあたふたと駆け寄りながら、今にも飛び出してしまいそうな心臓の拍動を自覚し、ますますレオノーラはパニックに陥る。

「だ、大丈夫、です!」

 出来るだけ、自然体で。
 必死にそう意識しながら、ある意味綺麗にひっくり返っていた本を元に戻した。

 そして彼女は、急いで「そこ」に目を走らせる。

(共に事をする者。なかま)

「――そ、それだけ!?」
「何が?」

 ふいに耳元を掠めた声にまたびっくりしている内に、本は簡単に、パロムの手に渡った。
 そして。

「……辞書?」
「え、あの、これは、その…っ」

 パニックは、最高潮[ピーク]に。

「パ、パロムはどうしてここへ!?」

 無理がありすぎてどうしようもない方向転換だった。
 けれど言ってしまえば、それは前から聞きたくて聞きたくて仕方なかった事のようにも思えてくる。

「さぁな」

 似合わない。自分の知っているパロムには、本に埋もれるような場所なんて。
 天才で、いつだって自信に満ち溢れていて――

「そんな御大層な理由なんてない、俺にとってはここが一番落ち着くから」

 本が飛んでいった場所、レオノーラがまだしゃがみ込んでいた隣に、パロムがすとんと腰を下ろす。
 埃っぽい古びた書庫の奥、床に座り込んで足を組んだまま器用に反り返ったパロムの顔は、窓から差し込む陽の光に照らされて、眩しかった。

「それだけだ」



『俺の相棒としては合格だ』

 あのページで開いたままの辞書を顔に載せたっきり、一言も喋らないパロムを見やりながら、レオノーラはあの日の事を思い浮かべる。
 一緒に戦う必要のない日々の「相棒」は、一体どうすればいいのか。

 まだ、わからない。







≪あとがき≫
 状況が…わかりにくい……orz
 
 パロムはエスパー並みに察しがいい方向で。わかってるけど、わからないふり。
 でも辞書の下で悶えてるんじゃないですかね。このサイトの台詞のクサさ加減に/(^O^)\





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