DATE 2011. 5.15 NO .



「――大好きだよ」

 僕が意地悪なんだって事は、君が一番知ってるよね。
 だから……許して、くれるよね。






 一日一日がいとおしい。春の日のまどろみにも似た、穏やかな日常が在る幸せ――京にいた頃の僕なら退屈で仕方なかっただろう。
 けれど今の僕は、当たり前の日々の輝きと脆さを知っている。
 いつかぬくもりを振り捨てて目覚めないといけない事を、知っている。

 君が何より愛おしい。毎日耳元で愛を囁いたって、僕の気持ちを伝えきる事なんて出来やしない。僕は毎日新しい君を知って、毎日もっと好きになるんだから。

 「好きだ」と伝える度に、頬を染めながら僕にもそう言ってくれる君が好きだ。
 そろそろ飽きたっていい頃だと、昔の僕なら笑うだろう。
 それでもからかい続けたのは誰だと、今の僕は笑うのだろう。

 そうやって今日も他愛ないやり取りをする事が出来る。
 その幸せを知って――その失う時を、想う。



 全部伝えきる事は出来なくても、それでも僕の精一杯を、君に。
 ――そんな殊勝な心がけをしてるわけじゃないんだよ。

 今日は何をしよう、明日はどこへ行こうか――身体が動く内に、出来る限りの思い出をつくりたいと思う。たくさんの言葉を、贈りたいと思う。

 ひとりの君を、支えるように。
 ふたりの君を、苛むように。

 いつか新しい幸せに巡り逢って、僕がいなくなった後も笑って生きてほしい。
 そう願いながら僕は、誰にも君を渡したくない、僕の思い出と一緒に生きてほしい、なんて思ってる。






 僕がわがままなんだって事は、君が一番知ってるよね。
 自分の願いに答えが出せない僕を、どうか、許して。

「ずっとずっと……あいしてる」







≪あとがき≫
 その睦言は、誰のために。





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