DATE 2009. 7.18 NO .



 月日は流れ、場所や立ち会う者達も違う――それでもどこかあの頃のような、出立の時。
 山の高みから望む青と緑の彩りは、彼の心をざわつかせた。

「本当に…行くのですか?」

「ああ」

 そんな短い応えからもにじみ出そうになる、想いを。
 ただただ彼は、押し込める。

「フースーヤは…生きているのかしら…」

「……」

「無事なのか? あの月は…」

「確かめにゆくのだ。それを…」

 確かめにゆく。
 答えを得て――それから?

 彼の前に、弟が静かに歩み寄った。

「兄さん…」

 無意識の内に頷く。

「さらばだ」

 これで最後だ。

 時を重ね、確かに歩みを進める彼らの前に立つ。
 最後にしなければならないのだ、と――

「また会えます!」

 彼ははっと我に返り、反射的に声の主を見やった。

「セオドア…」

 その名を口にする父親を、それから彼を瞳に映し、
 少年は、彼に理由を与えた。

「いつか、また…!」

 久方ぶりに生命溢れる緑の大地を踏みしめても、弟に再会しても。
 帰ってきた――そう感じる事は、なかったというのに。

 少年の笑顔と向き合って自らの名を伝える日が、いつか来るのだろうか。

「ありがとう…セオドア」



 彼はまた、新しい一歩を踏み出す。
 いつか、また――その日のために。







≪あとがき≫
 また旅立つ時にようやく、帰ってきたという感慨を抱いた。
 そんな感じの話。セリフは某所から拾ってきました。

 国内もWiiで配信か…据え置きはまだ無理だな……orz





top