DATE 2008. 8. 6 NO .
「これで最後……っと」
いつもは次から次へとじいが積み上げる。だが、今日は珍しく、まだ一度も来ていない。
(ま、その分最初の量が半端なかったけどな……)
さすがのじいも、今日ばかりは勘弁してくれるという事か。
立ち上がって机の上を片づけにかかる。内政の書類が大半だが、明日の招待状に対する各国の返事もリディアが読んだ後そのまま置きっぱなしだった。
もっとも、見かけは正式の文書でも、中身はほとんど私信と変わりない。
(特にバロンは――)
明日会ったら、文句の一つでも言ってやらないとな。
おそらく、各国の面々が集まったところで、先の戦いで被害を受けた地域の支援計画だとかを話し合う事になりそうだが。
「ったく、エブラーナのめでたい日をなんだと思ってやがる」
やっと引っ張り出せた書類は、その計画書だ。
昨日の最後に渡されて、目を通して、今日の書類が上に積み重なって――それで見えなくなっていたか。
ぱらぱらと繰ると、視界には数字が映る。もう一つの戦いよりはましなものの、結構な数字だ。
思い返すには、充分すぎるほどに。
俺にとってのあの戦いの始まりは、リディア以外の召喚士を見た、バブイルの塔での一連の出来事だった。
『イフリート……リディアは!?』
別の召喚士が使う同じ召喚術を見て、自分が召喚士の事をほとんどわかっていないと気づかされた。
それから文献を集めたりして、ミストの召喚士達の寿命が総じて短い事を知って。
いつか伝えよう――いつかこの感謝の気持ちをはっきりと言葉で伝えようと思っていただけなまま、突然いなくなってしまった親父とお袋の事を、思い出した。
何年経っても同じまま……それで、いいのか?
「――リディアは今、何してたっけか」
変えようと思った。
「…ちょっと覗きに行くか」
だから、今がある。
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